コーチとしてセッション経験の少ないクライアントさんが、知り合いの経営者さんに依頼され、ある1人のスタッフのコーチングをし始めたそうです。

 テーマは、「社長からアドバイスを受けて、そうしたほうがいいのはわかっているけれど、やろうと思う気持ちは50%位。どうしたら、言われたことを実行できるのか?」だったようです。
 なぜ、行動に移せないのかと言うと、そのスタッフの方は、「やるメリットを感じられたら、きっとやる」と考えているようでした。私のクライアントさんはコーチングの中で、自分の経験談をシェアして、相手が「そうすればいいのか」となったところで、セッションが終わったようでした。
 しかし、それは失敗のように感じたようです。なぜならば、スタッフさんが自分で気づいた感じや、それをやってみたい、というふうには、ならなかったからのようです。

 私も、コーチになって3年間くらいは、そのようなセッションになってしまうことがありました。今の自分から昔の自分を客観視してわかることは、対話が「どうしたらできるのか?」 だけになっているからです。もっと問題の本質を捉える事が必要なのです。

 具体的に、そのセッションがどんな内容だったかをお聞きしました。
 そのスタッフさんは、相手の気持ちを汲み取った接客が苦手だと、社長に思われているようです。そこで、社長としては、「家と会社の往復だけでなく、もっと色々な人に出会ってみたりとか、新しいことをはじめたら」とアドバイスした様子です。
 それに対しスタッフさんは、そんなことをしてメリットがあるのかどうか? 疑問に思っているところに、私のクライアントさんが「私は、こんな風に人に会っていますよ」と自分の経験談を述べたようでした。
 
 おそらく、セッションがうまくいかなかった理由としては、クライアントさんの立場に立って、一緒に考えるスタンスになっていないからでしょう。相手のバックグラウンドもありますし、もう少し相手の立場になって考えるために、突っ込んでいく必要があるのです。

 そのためには、「なぜ、社長がそう言ったのか?」もっと本質をとらえようとしてみることです。新しいことを始めたり、新しい人に会ったりすることで、コミュニケーションで揉まれる経験をするので、そのうち人に慣れていくのではないか?と。そこで、一つのアイデアとして「人に会う」を提案したのかと思います。社長さんの成功体験から来ているアドバイスだったのかもしれません。

 「人の気持ちを汲み取れるようになることで、セールスアップにも貢献してほしい」というところが、社長との共通のゴールですから、自分を変化させるためにやることは、「新しい人に会う」でなくてもいいのではないでしょうか。

 例えば、「自分が色々とサービスを受けて、その都度どう感じたか? を言語化し、感性を磨いていく」ならば、新しいところに出向かなくても、できる新しいことです。
 またセッションの中で、そのスタッフさんに「自分が受けたサービスで印象に残っていることは何か?」を聞いてみると、なにかしら、その人の中にある答えが導き出されるでしょう。すると、「そうか、人の気持ちを考えるというのは、そういうことなのか!」と改めて、体感できるはずです。コーチングセッションでは、質問を投げかけることで、追体験をしてもらうこともできるのです。

 「何をどうすればいいか?」だけでなく、コーチングでできることは、色々とあります。クライアントさんは、「えーどうしたらそうなるの?!」とまだハテナマークのようでしたが、相手が自分で気づけることを信じて、傾聴に努めることです。

 一方で、傾聴がうまくいったと感じたパターンについてもお話しになりました。
 カフェをやりたいと思う友人との対話では、相手は「スッキリした〜!」と言っていたそうなのです。何で、そちらはスッキリしたのか? 何が違うのか、自分でわからなかったようでした。

 昨日、私はコーチングについて知人に説明する機会がありました。色々と説明をしたら、「どちらかと言うと、行動が出来ていない人がセッションを受けるものなの?」と聞かれました。

 私のように、常に行動をしている人もコーチングセッションを受けています。セッションの時間を有効活用しています。まだ、アイデアがなんとなくで、顕在化していないときに、ブレストの相手になってもらえるからです。自分で考えるよりも効果的なので、セミナーの骨組みなどは、ほとんどセッションで決めていると言っても過言ではありません。
 また、ニュートラルな位置から指摘してもらうことで、自分の偏りにも気づくことが出来るのです。ときには、「それでいいと思う」と言われることでの確認も大変な励みになっています。

 つまり、スタッフさんとカフェをやりたいと思っている人の違いは、「相手の状態の違い」なのです。

 人の行動レベルを「不安状態・可動状態・行動状態」に分けると考えやすいでしょう。
 「行動状態」の人は、何をやるか?の対話の時間です。「不安状態」の人は、不安な気持ちをアウトプットしてもらう時間となったり、「可動状態」の人は、進みたいけれど、ブレーキがかかっている状態なので、ブレーキについて考察してみたりしています。

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 私はコーチをし始めた頃、「自分は変わらずに、いつも同じようにクライアントさんに関わっていけばいいのだ」と強く思っていましたので、「クライアントさんが、私に合わなければ、仕方のないこと」と割り切っていました。
 しかし、これではビジネスを継続させることは難しいと途中から気づき、もっと傾聴の対象を広げるために、自分を変えていったのです。結果、自分が相手によって自由に変化できることで、クライアントさんの幅も広がりました。
 
 クライアントさんは、「コーチが『わからない』と言ってはいけない」という思い込みがあったようなのです。そして、言ってあげる言葉がなくて、沈黙になってしまう度に、失敗した…と思い、そこからさらに「聴く」ところまで、進めていなかったようでした。

 対話は、潜在意識にあるものを引っ張り出すことが醍醐味です。「わからない」から傾聴するのです。私も一緒にわからないとき、潜在意識の中をもぐっている感じがしています。
 「沈黙はトキメキ by播磨さん」なのです。

今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

あなたの行動状態はどうですか?