「もう先輩なのですから、もっとしっかり…」と上司に言われ、どこをどうしていけばいいんだろう? とクライアントさんは悩んでいらしたようなので、「上司の視点」について前回のセッションで扱いました。
 「自分ができればいい」というところから「部下を育てるという」というところにステージが変わったことを自覚するセッションになりました。
 その後、たまたま上司面談があったそうで、セッションで話しあったことをそのまま伝えることになり、面談がとてもスムーズに終わったそうです。もしセッションで話し合っていなければ、「もっとしっかりやらなくちゃだめ」というようなことをまた言われたかもとおっしゃっていました。

 そこで今回は先へ進み「モチベーションの高い部下との接し方」というテーマでした。モチベーションが高いということは、良さそうな意味もありそうですが、扱いにくいと感じたからセッションのテーマになったのでしょう。どんな部下なのか、具体的に訊いてみました。

 その部下がケアレスミスをしたときのこと。そのことに関して「なんで?」とある上司が聞いたとき、部下は「人間だから間違えることもあります」と即座に返すというやり取りがあったそうなのです。職場は一瞬気まずい雰囲気となったそうです。あとから上司も「つい、すぐに言っちゃったわ・・・」と、自分の非を認めるような発言をその部下にしていたそうです。

 そうやってはっきりと言葉を返してくる部下。仕事内容的にも、与えられたことを忠実にこなせばいい職場で、言われたままにやることがどちらかと言うとよしとされるところがあるそうです。しかし、その部下は独自の発想をしたいタイプのようで、例えば「○○で25位だなんて、1位を目指しましょう!」とやる気満々な発言をして、「安全に、効率よく、お金もかけず」でどちらかというと保守的な現場では、扱いにくいなとクライアントさんも感じたようでした。

b 2年前も同じチームでやったことがあったそうなのですが、そのときは指示もしやすかったので、昔と違うことも戸惑う原因のようです。きっと自分がその部下と離れている間に、他の上司が自由にやらせる傾向でその部下も伸びたのかもしれないと、想像していました。今、自分が方針を伝えると、「え?なんで?」と戸惑いの表情になることもあるそうなのです。
 現段階でクライアントさんが考えた扱い方としては、自由にやってもらうというところを生かすのならば、もっと先々の指示を出した方がいいのかな? とか、ビジョンがある方がやるのかな? と考えたようでした。

 相手のモチベーションが高いからといって流されないことです。きっと「モチベーションが高いから任せてあげた方がいい」と思って、下手にでようとする感じも違うのだと思います。「人間ですから、間違えることもあります」と即答してしまうあたりからも、部下にも学ばなくてはいけないことが何かあるでしょう。

 おそらく、こういう部下のタイプは、打たれ強いかと思いますので、ネガティブフィードバックを敢えて言ってしまった方がいいかもしれません。ちょっと昔のわたしにも似ているところがあると思ったので。(笑)ネガティブフィードバックを言われると、ものすごく考えるのです。どうにかしたくて。褒められているだけにも危機感を持ってしまいます。自分が成長するところはどこか? を部下に尋ねてみたり、相手がまだ見えていないところがあったら、遠慮なく伝えることです。きっとドMなところがあるでしょう。(笑)
 そうクライアントさんに私の感じたことを伝えると、大爆笑していました。女性にして「wild wolf 」と書いてあるロゴTを選ぶような人のようです。そして、部下の男性に「wild wolfですか!」と突っ込まれてとても喜んでいたのを見たそうです。つっこまれることを想定して、そのロゴTをきっと選ぶようなフレンドリーなタイプ。なおさら、はっきり突っ込んでも大丈夫かと思います。(笑)ちなみに、突っ込むときに気をつけることは、「事実を述べる」ことだと思います。

 爆笑していたら、クライアントさんはふと思いつきが浮かんだようです。
 「○○さんを一人前にして!という課題を与えたら、さらに彼女はやる気を出しそうです。向上のための研修も生かせた方がいいかなと思っていたんですが、行ってもらいます!」と。その部下のことをいろいろと想像してみたら、接し方の可能性が見えてきたのです。

 また「じゃあ、どうするんですか?」と、率直に言ってくることも多いそうなので、そのときは、「一緒に考えよう」というスタンス、つまりコーチングスキルを用いて接してみることです。クライアントさんの次なる課題も見えてきました。上司として指示をするだけでなく、視点を与えてみたり、また一緒に考えてみたりする関わり方を勉強することです。

 「困った部下」にあたると、つい関わるのが面倒くさいという理由で、対処法を探したいと思う人も少なくないと思います。しかし私は、「どう切り抜けるか?」という対処法よりも、「どうかかわるか?」が大切なことだと思います。
 私が店長だった頃、部下を動かすための心理学で乗り切ろうとして、本を何冊か読みましたが、なぜだかそこに書いてあったことを実践しようとすることに違和感がありました。部下のことをよく考えもしないで、書いてある作戦を使おうとしていたからだと今ならよくわかります。「どう気まずい状況を切り抜けるか?」を私は探していたのですから。

 今回のセッションで「部下とどうかかわっていこうか?」と、上司が60分割いて考えてくれたことは、部下は知る由も無いですが、自分が上司になってみたときに、初めて気づくのかもしれませんね。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

相手のことを知るために何をしますか?