自分が平静でいられないときというのがあったそうですが、そんなときイライラとした事実をそのまま受け入れればよかったのかなと思い、イライラしているという気持ちを受け容れることで、気持ちは少し落ち着いたようでした。そういうことが幾つかあって、セッションで「人の感情に振り回されない」ことについて考えてみたいとのことでした。

 子供に教える仕事をしているクライアントさんです。
「お家で練習するのが嫌」と言う生徒がいて、レッスンが中断されることもしばしばあるそうです。その生徒は、ちょっと気晴らしをしてから、また戻ってきて、「じゃあやろう」と言ってくるそうです。

s クライアントさんが、とくにイライラとしてしまったのが、「先生のせいで時間が過ぎちゃったから…」と言われたときだったとか。
 「先生のせいで」という言葉に思わずイラっとして、子供に「先生のせいじゃないでしょ」と返したそうです。そうしたら、その子との間に3分間の沈黙が流れてしまったけれど、やがてまた元に戻ったそうでした。

 私はそれを聞いて、「子供らしいな〜」と感じました。子供と遊んでいると、何かが起きて、泣きだして、他の部屋に突然行ってしまい、あとから何事もなかったように、また現れて、遊びの続きを始めることを何度か目撃しています。その一連の流れを見たときに、子供は感情の扱い方を知っている」と思ったのです。大人だと、我慢をしたまま続けて、1年後爆発なさるかたもいらっしゃるそうです。

 クライアントさんと生徒の間に3分の沈黙が流れたとしても、それは子供にとっては、感情を解放している最中なのかなと思って、ちょっと待ってあげるとか、ただそばにいるとかすればいいのでしょう。そういう「一連の流れ」と捉えてみると、平静で寄り添えるのかもしれません。

 また、「先生のせいで」と言ったことに対して、いいとか、わるいとかつけずに、「どうしてそう思ったの?」とその気持ちを言語化させるように聞いてみる方法もあります。

 もしかしたら、普段あまり気持ちを聴かれていないのかもしれないなぁ。家の外に来たから、そのように振る舞っているのかな? と考えてみたりしながら、相手のことを見ていくと、掛ける言葉も見つかるような気がします。

 相手の話を聴いて、「イラ」っとくることがあったとしたら、自分の中の思い込みがそうさせているということです。「イラ」っとくるたびに、「何だろう?」と自分の中を見るようにしていったら、相手じゃなくて自分か、と気づけたことがありました。引っ掛かるたびに、自分を解放させることを繰り返していくと、次第にシンプルに相手のことを考えることができるようになるのです。

 それができるようになると、「人の感情に振り回されなくなる」ことに近付けるように感じています。

 もうひとつのセッションのテーマにも進みました。
「相手が安心感を持てるような言葉をかけたい」ということでした。生徒さんが、発表会に間に合うかどうかギリギリになっており、焦れば焦るほど、身に入らなくなっているそうです。なので、安心して取り組めるように、指導してあげたいとのことでした。

焦れば焦るほど。
ギリギリだ。

 その言葉の出所を考えると、過去から不安がやってきて、未来に対しては焦っているということです。つまり、「今に生きる」しかないよねということです。「今」をベストでやることしかできないのだから、今できることを真剣に取り組んで行こう。そう、伝えることが、相手が安心する言葉につながる一つなのだと思います。


 それから、最後にもうひとつ悩みがありました。「自分があまりしたくないことを勧めてくる人になんて言ったらいいか?」ということでした。

 言いにくい理由として、その人の熱意があるし、なんか悪いなという感じだとか。
何度も話をしてくれている手前…、でも興味が持てなかったから、仕方ないことなのです。相手のことが嫌いだからではなく、内容の問題だそうです。余計言いにくいですね。(笑)

 そんなときは、ありのままに「色々話して頂いたけれど、自分としては内容に興味が持てなかったんです」と伝えるしかないと思います。ポイントとしては、「相手の好意を受け取り、自分の考えていることを返す」です。

 それを聴いたクライアントさんは、「自分が話されることにどうしよう・・・となりすぎていた」とおっしゃっていました。

 このセッションで、3つのコミュニケーションのことを取り扱いましたが、クライアントさんの中で、なんとなくこの3つが全てつながっている気がして、腑に落ちた感を持てたようでした。

 いずれにしても、「どこを見るか?」で感じ方は変わり、伝え方は変わってくるものですね。自分ひとりだと、それがよくわからなくなっていることも少なくありません。視点を変える投げかけは、主語を変えるだけでも、意外と見えてくるものです。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

自分が話されることにどうしよう・・・となりすぎていませんか?