セッションのたびに、視点が変化していくので、セッションとセッションの間に色々と発見があるようです。今回は、相手の中に自分の嫌な面を見てしまい、ますます自分が嫌になってしまったとのことで、メールを頂きました。

 メールの内容は、「人に対していらいらすることは、『相手は自分の鏡』だから、相手にいらいらする所は、おそらく自分も持ち合わせていて、自分に対していらいらしているんだろうな、と頭では思うのですが、相手をみて本当に不愉快だから、自分もこんななの? と思うと、向き合うのすらいやになっています。こんな自分を本当に嫌いです。どうしたら昇華できますか‥。この自分はどうしても許せません」とのことでした。

 返信メールでは、「昇華するとしたら、そんな未熟な自分と相手を許してあげることです。相手を通して、自分の課題がわかったということで、その次は、改善です。改善できたら、自分のこと好きになれます。自分の嫌な部分を自分で改善することができるのです。相手を変えることはできないけど、自分を変えることができるというのはそんなことです」と書きました。

 その後も、思考していくうちに、「許す」と「改善する」ことに加え、もっと深いところで、昇華できそうなことが見つかりそうに感じたので、ブログでは、「相手は自分の鏡」についても、考えてみたいと思います。


 「相手は自分の鏡」という言葉を私が初めて聞いたのは、メンターからのメールでした。

 アパレル店長をしている時に、社長とのランチミーティングがありました。その時期は、私も成果を上げて、独立の方向へ進もうとしているタイミングでした。
 しかし、自信がついてきた自分に社長から褒められる言葉は一つもなく、「まだまだ」と、私も自分のスタッフについても言ってきたので、頭にきてしまいました。会社のために力を尽くしてきたと自負していたのに…。
 
 最初は黙って聞いていましたが、理性で抑えるよりも、行動が先に出てしまい、「帰ります」と言って、逃げるようにしてその場を去ってしまいました。社長に向かって失礼なことをしたと、後から自己嫌悪になったので、社長の立場だったら、どう考えるのかな?と、その状況についてメンターにメールしたら、返事を頂きました。
 「まずは、ありがとうと言って下さい。相手は自分の鏡です」と書いてありました。

 「ありがとう」とメールして、いろいろと相手の立場について、見えてきたことはあってよかったのですが、「相手は自分の鏡です」という言葉は、生まれて初めて聞きました。腑に落ちるまでその後、7年くらいかかりました。

 鏡だから、似ているところがあるのだろうと考えました。
「世の中が驚くことをしてみたい」というように考えるところは、社長と似ているように感じました。
 しかし、よくよく考えてみると、相手と自分の考え方が似ているとか、そういうこと以外のことなのではないかと思いました。

 「相手の態度で、怒りが湧いた」というところを考えてみました。
自分の中に、「怒りの因子」があることを、相手は鏡になって見せてくれたと言うことです。
 つまり、相手のことはあまり関係なく、自分の中の事に気付くように視点を移すことが必要なのでしょう。

 そのころ、同じタイミングで「怒り」に関しての出来事がありました。
 友人が、私と母親との電話のやりとりに何度か遭遇して、気づいたことを教えてくれました。
「お母さんとの電話のとき、いつも怒ってるよ」と。

 最初は、友達の言動に戸惑いましたが、本当にそうでした。母親が、何か怒らせるような事を言わない時も、けんか腰の自分を発見しました。

 おそらく、自分が決定したことを母親に言うと、「よく考えなさいよ」とか、「やめたほうがいい。なぜなら・・・」とほぼ返ってくることが重なり、何も言われたくないと無意識で思っていたから、毎回、けんか腰で電話に出ていたのです。敵がこないように、はじめから、ツノを出している状態です。心配してくれているのは、有難いと理解しても無理にそう解釈した感じが残りました。
 親だから、自分の決定やこれから決めようとしていることをそれとなく話すのですが、毎回、向こうの主観で、すぐ返してくるように感じていたので、面倒なことが起こることは、控えたいというか。

 自分もそんなところあるのかな?と、自分の悪いところを母親にみたのかな? とも考えてみたのですが、コーチの仕事では、アドバイスをしないことを心得て、セッションに当たることができるようになったので、それは違うのかなと思いました。では、どんな発見が必要なのか? なんとなく考え続けていました。

 それから、7年が経ちました。
 昨年、メンタルケア講座を受けたときに、「気持ちを聞くことが大切です」と、何度もそう聞かされたことが、一番印象に残ったことでした。

 その講座を受講していた日の昼休みに、母親から電話がちょうどかかってきて、ある決定を話してみたのですが、やはりアドバイスばかりするな、と言うことに気付き、悲しくなって涙まで自然と流れてくるのです。そこで、初めて「気持ちを聴かれていない気がする」と気づき、母親にそうメールをしたのです。
 そして、気持ちを聴かれていない自分を体験したことで、気持ちを聴くことの大切さが身に沁みました。

 たまたま、講座でお知り合いになった母親くらいの年齢の方に、そのやり取りのことを話したら、「私も、息子に気持ちを聞かれていないと言われたことあるわよ」とおっしゃっていました。それを聞いて、伝えることもありだと思いました。

 その後、私自身も気持ちを聞くことに、重きを置くようになりました。聴かれて一番スッキリするところは、気持ちの部分です。そこを話してから、「どうするか?」の話へ進むことは、とても自然な流れのような気がしますし、相手も気持ちの整理をつけることで、自分で決めやすくなるでしょう。

 「相手は自分の鏡です」の言葉を聞いてから、随分経ちましたが、ここまで考えて実行して、昇華できた気もします。
 
 私が、「相手は自分の鏡です」という言葉を知ってから、していなかったことは、自分がそうされてあまり気持ちがよくないと言うことを、相手に伝えることでした。
 社長に関しても、母親に関しても、「何で、聴いてくれないの?」と思うだけで、ツノを出していただけだったのです。

 つまり、自分の感情を吐き出せていないことも昇華できていない原因なのかもしれません。

 相手に言わないで、どうにか収めようと頑張ろうとすればするほど、自分の気持ちを脇に置くでしょうから、自分が自分の気持ちを聴けていないのかもしれません。「嫌だ」という気持ちをそのまま認めてあげましょう。そして、「どうして欲しいの?」と自分の心に聴いてみることです。

 相手に伝えようとメールを書きだしたら、自分の気持ちに気づけるので、ときには、相手に伝えなくても、気が済んでしまう場合もあるでしょう。もし、伝えるならば、相手に感情的に伝えるというよりも、相手に届きやすい言葉を考えて伝えれば、自分も後から自己嫌悪にならないでしょう。相手もきっと成長しなくてはいけないところがあるから、お互い様なのです。

 私の場合、「昇華」できた瞬間というのは、「どうして欲しいの?」と、自分の気持ちを聴いてあげるところだったのだと思います。

 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

自分の感情を吐き出していますか?

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